「いやね、波を隠すなら波の中ってやつでね」


澄み渡る水面では 広がる波紋は隠せない
踊れ大波 朗らかに
揺らぎを飲み込んで

手早く散らして 循環に乗せて
溶かしたくないものは水底へ
眩しいほどの陽射しでありたい
そんな少しの憧憬に生を捧げる

陸から船も出せない 到達不能な極に
記憶の影をくるんだ ノーティラスの殻
光を重ねてみても たやすく染められるなら
自分の世話くらい一人でする から

鮮やかな珊瑚礁 ただ一つ曝け出す
瑠璃色の、その奥は空っぽだと思っていて
300ファゾムの向こうは覗かないで
低温の中 伸ばされた腕を
圧し潰してしまう

追い立てて剥がしても無駄なことだ

“隠されたものだけが ただ一つ真実” と
瑠璃色の、その奥を探られても意味がない
太陽でありたいと あろうとする願いまで
嘘、不実、裏切り、まやかしと呼ばないで