2010年のある初夏の日、楽譜ソフトをいじっていたら何かができたのでustにしてみた。
まさか本当に歌ってくれるとは……


銀に輝いた飛沫に 胸は高鳴り
むせ返る潮風に いつしか酔わされ
目も眩む白砂が 熱を帯びる中で
一人の聴き手もなく 歌い始めた

蒼と碧の狭間に 吸い込まれるように
理由も考えず また ここに至る

もし 訳を問うならば こう語るのだろう――
「渚が、ただ俺を呼んでいるから」

透き通る水は 光と歓喜を湛えて
熱く揺らぐ空気は 思い出を抱く
友と来る浜ならば 尚更賑やかで
わきあがる感情は 雲ひとつなく

それなのに 何故 今日は 波音が痛い?
景色も 心乱し見透かすようで……

深さも知れない碧の奥に求めるのは
安らぎか、それとも、誰かの面影?

 *

心揺さぶる怒濤は激しく、その上
力の抜けるような 優しい感覚
瞼の裏に込み上げて 疼く思いは
外に溢れぬよう 泡に溶かして

その時に はじめて 事実に気づいた
一つが 知らぬ間に積み上げた痛み

そして 渚がこの身を呼ぶ訳ではなく
潮騒に焦がれたのは 自分の方だったと――

細波の囁きは 胸に染み渡って
緩やかに 感傷を押し流してゆく
再び 友とこの砂を踏むときは もう
曇りさえ見せずに 笑えるだろう

翌朝の渚には どんな風吹くか
水面は 穏やかに揺れているのか

眩しさも 火照りも 騒めきも 抱きしめて
笑顔を取り戻し 歩き始める

代わりに歌一つ、ここに残して……